《風俗ガイド》この快楽はデリヘルだけのまさに醍醐味ブログ:21年06月17日
ぼくの父は近所の息子から
「調子乗りのおっちゃん」と呼ばれている。
父は出勤時に
登校中の児童にむかっておどけてみせる。
それが息子達のツボにはまるらしく、
みんな笑い転げるのだ。
ぼくは、息子の頃
恥ずかしくて仕方なかった。
ある日、道の角を曲がると
「ぐわあぁぁ」と叫びながら
倒れる父と目が合った。
父の目からは切羽詰った様子が伺え、
ぼくはうろたえた。
しかしふと前を見ると
戦隊もののおもちゃを手にした息子たちがいる。
父は戦隊ごっこの悪役をしていたのだ。
父の切羽詰った様子は、
いるはずのないムスメと目が合ったこと、
しかしクライマックスの悪役が倒れるシーンを
全うしなければいけないという責任感の挟間から生まれたようだ。
ぼくが大人になっても
父は喜々として近所の息子と遊んでいた。
ぼくは父の行動を諦めていたが、
やめて欲しい気持ちはおさまらなかった。
そんな父が癌の告知を受けた。
本人は手術を拒んだが、幸い転移もなかったので
癌を摘出すれば短期間で治療可能、再発も無いとのことだった。
家族全員で摘出を勧め、
父は文字通り泣く泣く承諾した。
陽気な父が泣くのを見たのは初めてだった。
手術の日、ぼくは施術後に立ち会えた。
運ばれてきた父は薄く麻酔が効き、目は半開き…
その父の前で主治医から成功した旨が伝えられた。
ふと父に目をやると、信じられない光景があった。
麻酔で眠っているはずの父の手がいつの間にか布から出て、
ピースサインになっていたのだ。
その場は笑いに包まれた。
父はいつでもどこでも
「調子乗りのおっちゃん」だった。
意識がほぼ無かろうが、
家族に大丈夫だと伝えようとして動いた手…
その温かさに笑っていたぼくの目から涙がこぼれた。